「SCV」導入はなぜうまくいかない? 現場が直面する5つの壁と突破のヒントサプライチェーンビジビリティーとは何か【後編】

サプライチェーンビジビリティー(SCV)の導入を成功させるには、どのような技術や視点が必要なのか。企業が直面する5つの主要な課題と、これからのトレンドを実践的に解説する。

2025年06月04日 06時00分 公開
[Katie Terrell HannaTechTarget]

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 サプライチェーンビジビリティー(SCV)は、部品や製品が製造元から最終目的地までどのように移動しているかをリアルタイムで追跡、監視する能力および仕組みを指す。SCVはサプライチェーン全体の透明性を高め、関係者全員が正確かつタイムリーなデータを参照、活用できるようにする上で有効だ。企業がSCVを実現するために必要な構成技術や導入時の課題、今後のトレンドを紹介する。

SCVの役割

 SCVは一般的に、基幹業務(ERP)システムと連携しながら機能する。しかし近年では、外部委託を利用したサプライチェーンを構成する傾向が強くなっており、SCVの重要性が増している。外部委託によって、企業はサプライチェーン全体の可視性と管理能力の一部を失うことになるからだ。

 SCVを使えば、企業はサプライチェーンで不足が発生する兆候を示す指標を事前に確認し、深刻化する前に対策を立てることができる。これによってボトルネックを解消し、業務目標やコンプライアンス要件、納品義務を達成するための体制を整えることが可能となる。

SCVに関するデータ

 SCVを通じてサプライチェーンの可視性を高めるには、さまざまなデータ収集活動が必要だ。以下に、SCVで一般的に収集されるデータの例を示す。

  • 注文状況
    • サプライチェーンを通じて貨物がどこにあるかをリアルタイムで把握することで、企業は商品の到着時期を正確に予測でき、業務効率を維持できる
  • 監査記録
    • サプライチェーン全体における各種コンプライアンス関連情報や規制情報などの情報を指す
    • 企業が法令にのっとって業務を実施していることを保証するために不可欠だ
  • 出荷情報
    • 商品の出荷に関するリアルタイムデータを指す
    • SCVソフトウェアを通じて、関係者全員に同じタイミングで共有する

SCV実現の前に立ちはだかる課題

 SCVにはさまざまな利点がある一方で、その実現は簡単ではない。以下は、SCV導入や運用における代表的な課題だ。

  • データの断片化と情報の不整合
    • 相互に連携していないシステムを使っている企業では、情報の抜けや重複が発生しており、可視性が損なわれている
  • リアルタイムなデータの欠如
    • データ収集が遅い、もしくは不正確なデータしか集められないといった状態では、障害が起きても企業は迅速に対応できない
  • サイバーセキュリティとデータプライバシーのリスク
    • サプライチェーンはデジタル化しつつあり、機密情報を保護するための強固なセキュリティ対策が必要になる
  • 技術導入への抵抗
    • 導入コストへの懸念、技術の複雑さ、社内に専門知識を有する人材がいがないといった理由から、最新SCV技術の導入判断をためらう企業がある
  • サプライヤーやパートナーとの連携課題
    • SCVの実現には、サプライヤー、製造業者、流通業者、物流事業者など、複数の関係者との協調が不可欠だ

 これらの課題を克服するためには、企業はSCVシステムへの投資を惜しまず、サプライチェーン全体のデータを一元化し、全ての関係者との連携を強化する必要がある。

将来の動向

 SCVは今後、新興技術、自動化、データインテリジェンスの進化によって大きく変化すると考えられる。今後の主な動向は以下の通りだ。

  • AI技術による予測分析の高度化
    • 人工知能(AI)技術は、サプライチェーンの障害を予測したり、最適な輸送ルートを提示したり、非効率な部分を特定したりするなど、より重要な役割を担うようになる
  • デジタルツイン技術の活用
    • デジタルツイン(仮想空間で再現されたサプライチェーンのシミュレーション)によって、企業はさまざまなシナリオを事前にテストし、計画精度を向上させることが可能となる
  • IoTとスマートロジスティクス
    • IoT(モノのインターネット)センサーや相互に接続されたデバイスの活用によって、追跡の精度が向上し、盗難防止やコールドチェーン(低温物流)管理などを改善できると考えられる
  • サステナビリティーと倫理的調達
    • 企業が倫理的な労働慣行の順守、カーボンフットプリントの追跡、ESG(環境、社会、ガバナンス)目標の達成を支援する手段として利用する可能性がある
  • 自律型サプライチェーン運用
    • 自動化、ロボティクス(ロボットとAI技術を組み合わせた自律制御技術)、データを通じて学習する自己学習型AIシステムの導入によって、製品の製造、保管、輸送の在り方を変革すると考えられる

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